一覧に戻る

友達のジョン

私の友達「ジョン」について

 

 

ジョンは自由を求めていた。若い頃、彼はどこにでも行けることが幸せだと思っていた。

毎年、世界を旅し、見知らぬ街で過ごす日々に心を奪われていた。

どこに寝ても、どこに食べても、風の音や異国の匂いが彼を包んでくれる。

それこそが、彼にとっての生きる意味だった。

 

それでも、多分ジョンはどこかで心の奥底に「家」という概念が引っかかっていた。

 

ジョン:「コウキ(私)僕は住むところを決めずに自由に生きていたいんだ」

 

コウキ:「生き方には正解は無いよ!僕は大工仕事は得意だからDIYしたい時は相談してきな!」

 

などと会話する事があった。

 

ある日、ジョンは旅先の小さな町で、一軒の古びた家を見つけた。

外壁ははげ落ち、庭は荒れ果て、屋根の一部は崩れかけていた。

その家はまるで誰も住んでいないかのように静かだったが、どこか懐かしい温かさを感じさせた。

彼はその家に魅了され、衝動的にその家を買うことを決めた。

 

最初は、私に相談しながらワクワクしていた。

ジョンは旅の途中、いつも見逃してきた細かい風景に気づき始めた。

古い木の床を磨き、窓を拭き、庭に花を植える。それが彼にとって新しい冒険のように思えた。

けれど、少しずつ、その「家作り」が彼を疲れさせていった。

 

最初に気づいたのは、冬の寒さだった。

寒冷地での古い家の修理は思った以上に手間がかかった。

水道の配管が凍り、暖房が効かなくなり、家の中を暖かくするために何度も手を加える必要があった。

朝目覚めるたびに、壊れた部分を修理し、また壊れ、そして修理する日々が続いた。

 

ジョンはふと、気づいてしまった。

自分が自由だと思っていた家は、実は多くの責任と重荷を背負っていたのだ。

外の世界へ出かける自由を感じる暇もなく、家の中での問題に追われる毎日。

最初は「家」というものに温かさを感じていたが、今はその温かさが重荷に感じられた。

 

ある日の夜、ジョンは家の窓から外を眺めながら、ふと昔のことを思い出した。

旅をしていた頃、星空の下で寝転がり、風に吹かれながら自由を感じていたあの頃。

あの時の自分はどんなに幸せだっただろうと、思わず涙がこぼれそうになった。

 

「どうしてこんなことに…」ジョンは一人呟いた。

家がこんなにも自分を縛るものだとは思わなかった。

 

その時、ジョンの目にふと、庭に咲いた一輪の花が映った。

荒れた庭の隅で、寒さに耐えながらひっそりと咲いていたその花は、ジョンの心に強く響いた。

 

「こんなに厳しい環境でも、それでも咲いているんだ」と、ジョンは思った。

 

次の日、ジョンは決心した。家を持つことの本当の意味を、もう一度深く考えることにした。

そして、修理の手を休めては庭を歩き、草木を育てることを始めた。

 

その過程の中で、ジョンは気づき始めた。

 

家というものは、ただの「場所」ではなく、そこに生きる人々の時間や思いが宿る「空間」だということ。

 

ジョンは次第に、家を作ることが、外の世界で得られる自由とは違った形の「自由」を与えてくれることに気づいた。

家は外の世界と切り離されているわけではなく、むしろその家を守り続けることで、心の安らぎや安心感が手に入るのだと。

 

家は、ただの物理的な構造ではなく、心の拠り所となる場所。自分がこの場所で過ごす時間が積み重なることで、初めてその意味が深まっていくのだ。

 

そしてジョンは思った。

家は、自由を求める心に必要な「根」を与えてくれるものだと。外の世界へ出て行くためには、まず自分がしっかりと立つ場所が必要だったのだ。

 

その日からジョンは、家の一部一部を修理するたびに、また新しい希望を感じるようになった。

 

壊れた壁を直すこと、それは自分の心を整える作業のようだった。

庭に咲く花々を育てること、それは未来に向けての小さな一歩を踏み出すことだった。

 

ジョンが最終的に家を完成させたとき、彼はふと空を見上げた。

そこには、昔のように広がる星空があった。しかし、今のジョンは違っていた。

あの自由を求めて旅をしていた自分と、今この家に根を下ろし、静かに生きる自分。

その両方が、これからの自分に必要なものだと、彼は深く理解していた。

 

家があることで、ジョンは今まで感じなかった「本当の自由」を手に入れた。

 

それは、他のどこにも行ける自由ではなく、この場所で自分を育て、守り、次の一歩を踏み出す力を持つための自由だった。

 

いつか完成した時は「ホームパーティー」に招待されることを私は待っている。

 

 

佐藤建設 佐藤光輝