クエリー二・スタンバーリア財団イタリア ベネチア カステッロ
建物内部にもヴェネチアの潮の満ち引きを取り込み設計されている。
撮影:佐藤建設株式会社 佐藤光輝




















🏛️ 海外視察レポート|クェリーニ・スタンパーリア財団 — 貴族の邸宅に息づく歴史と現代の融合
① 建物の歴史と現在の役割
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Palazzo Querini Stampalia はもともと、16世紀初頭(1510年代〜1520年代)に、ヴェネツィアの名門貴族 Querini Stampalia 一族の邸宅として建設された宮殿です。 ウィキペディア+2Best Venice Guides+2
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18–19世紀にかけて増改築や内装の改修が繰り返され、1階には「黄金の間(カメラ・ドーロ/金の間)」など、華やかな宮廷空間が備えられていました。 ウィキペディア+2Monica Cesarato+2
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最終的な当主である Giovanni Querini Stampalia 伯爵は、1868年の遺言でこの邸宅とコレクション、蔵書・美術品などを “公共のための財産” として遺すことを定め、1869年にクェリーニ・スタンパーリア財団が設立されました。以後、この邸宅は美術館・図書館・文化施設として公開され、ヴェネツィア市民および世界からの訪問者に開かれた場となっています。 ウィキペディア+2Fondazione Querini Stampalia+2
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つまりこの建物は「貴族の私邸」から「公共の文化拠点・住まいの記憶を伝える施設」に姿を変えた、非常に稀有な歴史的建築です。
② 建築と空間の魅力 — 古き良き邸宅とモダン改修の融合
この財団の最大の魅力は、歴史的な邸宅としての品格と、改修を経た現代性とのバランスにあります。
🎨 歴史あるインテリアとコレクション
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2階(piano nobile)には、かつての貴族の生活空間としての家具・調度品、絵画、装飾、磁器、旧貴族の暮らしを伝えるアートワークが保存されており、いわば「18–19世紀のヴェネツィアの邸宅」をそのまま体感できます。 ウィキペディア+2Monica Cesarato+2
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絵画コレクション(Pinacoteca Querini Stampalia)には、ルネサンス〜バロック〜ロココ期の作品群が含まれ、当時の美術・宗教・生活文化の断片として非常に充実した内容になっています。 ウィキペディア+2visit-venice-italy.com+2
🔄 モダン建築家によるリノベーション — 新旧の対話
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20世紀半ば、建築家 Carlo Scarpa が 1959〜1963 年にかけて、1階および中庭・庭園部分を大胆に改修。時に “水のある空間” を設計に取り込むことで、ヴェネツィアの水都としての特性と “宮殿の重み” を再定義しました。 ウィキペディア+2archivibe.com+2
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Scarpa は運河からの水の流入を計算に入れ、水の出入りを許す水門、床のモザイク、木と石の橋、小さな回廊、庭の配置などを設計。歴史と自然、建築と時間の流れを“対話”させるデザインは、非常に詩的で印象的です。 Google アート & クルー チャー+2archivibe.com+2
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さらに、近年では Mario Botta や Valeriano Pastor など他の著名建築家も改修に携わっており、宮殿の歴史性を尊重しながらも、現代の利用に対応する施設としてアップデートされています。 〖世界建築巡り〗+1
📚 図書館・公共施設としての機能
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財団には大規模な公共図書館が併設されており、古書から現代書籍まで約 数十万冊の蔵書を所蔵。ヴェネツィア市民や研究者、観光客に向けて開かれており、文化発信・学術研究の拠点として機能しています。 Fondazione Querini Stampalia+2Fondazione Querini Stampalia+2
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また、美術館、展示スペース、会議室、イベントホールなど、多用途に使える構成となっており、「古い宮殿の保存」と「現代的な文化機能の両立」が実現されている点が非常にユニークです。 ウィキペディア+2coopculture.it+2
③ 私たち(佐藤建設)にとっての示唆 — 家づくり・まちづくりへの応用
このクェリーニ・スタンパーリア財団の視察から、私たちが設計や提案に活かしたいと思ったポイントは次の通りです:
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歴史と「現代の使いやすさ」の融合
伝統的・歴史的建築の持つ“時間の厚み・風格”を尊重しつつ、現代の住みやすさ、機能性、用途の多様性を取り込む。新築だけでなく、既存建築のリノベーション・再利用にも応用できる考え方。 -
敷地・環境・気候をデザインに取り込む
特にヴェネツィアのように水環境・地形に特徴がある土地では、それを活かすことで “場所らしい空気感” をつくる設計 ― 水の入り口、水の回遊、庭と建物の一体感、光と影、風の抜け ― を建築に組み込む。 -
「住まい/建物」を “記憶の器” として捉える
単なる住居やオフィスではなく、時間とともに “歴史・文化・暮らしの思い出” を蓄えていける建築。家づくりにおいても、こうした “ストーリー性” を提案できる。 -
公共性とプライベート性のバランス
個人の住まいだけでなく、図書館・ギャラリー・コミュニティスペース・イベント空間などを含めた “場の広がり” を意識。将来的にも多様に使える、柔軟な建物設計の発想。 -
素材とディテールにこだわる “上質さ” の追求
石材、木、金属、漆喰、モザイク、水といった多様な素材を用いた繊細なディテールや仕上げ。これにより、単なる箱ではなく “体験のある空間” を提供できる。
📝 まとめ
クェリーニ・スタンパーリア財団は、16世紀に生まれた貴族の宮殿が、時を経て “公共の文化遺産” へと姿を変えた特別な建築です。
宮殿としての重厚さ、歴史とアートの蓄積、そして 20 世紀以降の建築家たちによる継続的なリノベーション――これらが重なり合って、「過去 × 現代 × 未来」が同居する、非常に豊かな空間となっています。
私たち 佐藤建設としても、このような “時間の深み × 住まい・場のデザイン” を大切にし、宮崎という土地やお客様のライフスタイルに合った、 「記憶と暮らしを育む家」 の提案をしていきたいと思います。