モノリット教会フランス南西部 サンテミリオン
一枚の岩から作られていることからモノリット教会という名前が由来しています。
撮影:佐藤建設株式会社 佐藤光輝














海外視察レポート|モノリット教会(Église Monolithe de Saint-Émilion) 視察
地中海・石の文化が生んだ「彫り出された建築空間」
① 視察対象 — モノリット教会とは?
フランス南西部、ワインの名産地サンテミリオン(Saint-Émilion) の中心に位置する「モノリット教会(Église Monolithe)」は、
巨大な一枚岩(モノリス)から彫り出された教会建築です。
「モノリット」は
mono(単一)+lithos(石)という意味で、
この教会は岩盤そのものを掘削して内部をつくった世界的にも稀有な石造建築として知られています(地下に展開する彫り出し空間)。
本来の「建てる」建築ではなく、「素材を掘り、開く」建築という視点を体感する場でもあります。
② 建築としての特徴 — 彫り出しの思想
🪨 一枚岩から生まれた空間
モノリット教会は、高さ約 20mにもなる岩盤をそのまま掘削して創られています。
一般的な建築とは逆に、外部から素材を切り出すことで空間を成立させる方法は、
建築というより「彫刻的空間」としての存在感が際立ちます。
つまり、
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壁も
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天井も
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造作も
すべて岩に刻まれた「同じ素材」の状態で存在し、
「素材 = 空間」をつくる建築として成立しています。
③ 内部空間 — 光と素材のダイナミクス
🌤 光の扱い
モノリット教会内部は基本的に地下空間でありながら、巧妙に採光が工夫されています。
窓や開口部から差し込む日は、岩の灰色・質感を柔らかく変化させながら空間全体を照らします。
光が素材のテクスチャに溶け込むように広がることで、
見る者に「静けさ」「重力感」「時間の重さ」を意識させます。
🧵 素材としての一貫性
内部の柱・壁・階段・祭壇まですべてが同一素材で構成されており、
装飾は最小限。細部も岩を加工した状態のまま残され、
素材の存在感が空間の主要な「デザイン要素」 となっています。
このような「装飾を削ぎ落とした存在感」は、
単なる宗教建築を超えて、
空間と素材の関係を研ぎ澄ませた建築体験 として成立しています。
④ 彫り出し建築としての建築的示唆
🔹 素材を「そのまま活かす」こと
一般的に、建築は材料を加工し組み立てる行為ですが、
「彫る」という行為は素材の内部に空間を創ることを意味します。
つまり、素材と空間が一体となることで、
“場そのものが場所の歴史・風土を語る空間” になるのです。
これは住宅でも応用可能な発想です。
⇒ 素材の“力”を信じ、
「削ぎ」「整える」「見せる」ことを設計の中心におくことで、
素材感・質感といった空間体験が高まる可能性を感じます。
🔹 光と影の関係性
モノリット教会では、自然光が素材に影を落とし、
素材の質感を強調しています。
これは
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外壁の表情
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開口配置
-
光の入り方
を考える際に、
単なる明るさではなく“質のある光” を住宅設計でも意識する必要性を教えてくれます。
⑤ 空間と時間の触れ合い
モノリット教会は、単に「巨大な教会」ではありません。
石を「積む/組む」ではなく「掘る」というプロセスは、
“時間を刻む行為そのものが空間になる” という思想を含んでいます。
石はそこにあり続け、
人はその中を歩き、
光が変わり、
時間が流れる。
この一連の体験は、
「暮らしの場」としての住宅にもつながる深い感覚を与えてくれます。
📝 まとめ
モノリット教会(サンテミリオン) は、
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「素材=空間」
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「掘るという設計」
-
「光と影の質」
を研ぎ澄ませた建築です。
一枚の岩から生まれる空間は、
過去 → 現在 → 未来へと連続する時間の厚み を感じさせます。
この視察を通じて学んだことは、
単なるデザインの発想だけでなく、
素材そのものの力と空間の関係を最大化する設計視点 です。
住宅・住まいをつくる際にも、
素材・光・形を読むことで、
「暮らしの深さ」をつくるヒントになりました。