戻る

世界遺産視察

ノートルダム・ド・セナンク修道院フランス ゴルド

1148年に建築。
ロマネスク様式の石造りの建築物。
セナンコル川の流れる渓谷内にあります。
美しいラベンダー畑が有名です。

撮影:佐藤建設株式会社 佐藤光輝

 海外視察レポート|ノートルダム・ド・セナンク修道院 視察

— 静寂と石がつくる「本質的な空間」


① 視察の背景と場所

南フランス・プロヴァンス地方、ゴルド近郊の谷あいに佇むノートルダム・ド・セナンク修道院を視察しました。12世紀に建立されたシトー会修道院で、周囲のラベンダー畑と石造建築が織りなす風景は、装飾を極限まで削ぎ落とした精神性を今に伝えています。


② 建築の特徴|「削ぎ落とす」ことで生まれる強度

  • 石造の量感と比例
    厚みのある石壁、低く抑えられた天井、単純明快なプロポーション。視線は自然と奥へ導かれ、空間に重心の低い安定感が生まれています。

  • 光の設計
    開口は最小限。直接光ではなく、反射光・拡散光が石肌を撫でることで、時間帯ごとに表情が変化します。

  • 素材の一貫性
    石・木・素焼きの床。素材を限定することで、触感と温度感が空間体験の核になります。


③ 回廊と内部空間|沈黙がデザインになる

中庭を囲む回廊は、歩行のリズムと柱の反復が心拍に同調するような設計。装飾に頼らず、寸法・反復・影だけで場の質を高めています。内部礼拝空間でも同様に、音が吸われ、言葉よりも気配が際立つ構成でした。


④ 視察から得た示唆(住宅設計への転用)

  • 引き算の設計:要素を減らすほど、比例・素材・光の精度が問われる。

  • 光は“量”より“質”:直射を避け、反射・間接で時間を表現する。

  • 素材を限定する勇気:少数素材の反復が、空間の記憶を強める。

  • 静けさの価値:視覚情報を抑えることで、暮らしの集中度が上がる。


⑤ まとめ

ノートルダム・ド・セナンク修道院は、贅沢=付け足しという常識を覆し、本質=削ぎ落としで成立する空間の力を教えてくれました。
住宅においても、光・比例・素材の精度を高めることで、日常はもっと静かで豊かになります。
この視察で得た「引き算の思想」を、住まいの設計に確かに落とし込んでいきます。