フランス 左官職人ニース
俺の仕事を見てみなよ!みたいな感じになり
なかなかワイルドな手さばきでした。




海外視察レポート|フランス 左官職人の仕事を視察
― 漆喰(しっくい)補修に見る「職人技と時間の重なり」
① 視察の背景
フランスにて、伝統的な左官職人による漆喰補修の仕事を視察しました。
新築ではなく、長年使われてきた建物を直しながら住み継ぐ文化の中で、左官という仕事がどのように位置づけられているのかを知ることが目的です。
② フランスの漆喰補修とは
フランスの建築では、石造やレンガ造の建物に**石灰系の漆喰(ライムプラスター)**が広く使われています。
今回の視察では、劣化した壁を壊して新しくするのではなく、
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既存の下地を見極め
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必要な部分だけを補修し
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周囲と自然になじませる
という、「直すための左官」の仕事が行われていました。
③ 左官職人の仕事の流れ
■ 下地の確認と判断
まず行われるのは、壁の状態確認。
ヒビ割れ、剥離、湿気の影響などを細かくチェックし、すべてを塗り替えない判断をします。
「どこまで直すか」を決めること自体が、職人の技術。
という印象を強く受けました。
■ 石灰漆喰の調合
使われるのは、石灰を主成分とした漆喰。
現場の環境や既存壁の状態に合わせ、硬さ・水分量・粒子感を微調整していました。
■ 塗りと仕上げ
補修部分は、
・あえて完全にフラットにしない
・既存の壁の揺らぎやコテ跡を再現する
など、「新しく見せない仕上げ」が徹底されています。
これは、時間の積層を壊さないための配慮だと感じました。
④ 漆喰補修から感じた価値観
今回の視察で特に印象的だったのは、
「完璧にすること=良い仕事ではない」という価値観です。
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新旧を無理に揃えない
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直した跡を消しすぎない
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建物の履歴を尊重する
左官の仕事が、単なる仕上げ作業ではなく、
建物の時間を読み取り、次へつなぐ行為であることを実感しました。
⑤ 住まいづくりへの示唆
フランスの左官職人の仕事から、次のような学びがありました。
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素材は「新しさ」より「呼吸すること」が大切
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すべてを交換しない判断力こそ職人技
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経年変化を前提にした補修は、建物を長生きさせる
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直す文化が、住まいへの愛着を育てる
これは、新築住宅においても、
「いずれ直しながら使える素材・構法を選ぶ」という考え方につながります。
📝 まとめ
フランスで見た左官職人の漆喰補修は、
派手さのない、静かで誠実な仕事でした。
建物を消費するのではなく、
時間とともに育て、受け継いでいくという姿勢が、
左官という仕事を通して、はっきりと伝わってきます。
住まいづくりにおいても、
「完成した瞬間」ではなく、
10年後・30年後にどう在るかを考えることの大切さを、改めて感じた視察でした。